日記

お腹が空いていた、おじいさんのお話

私が20代前半の頃、市役所で働いていたとき、大きなテレビがある待合イスのところに、いつも同じ服を着たおじいさんが座ってました。

なんとなく、いつもいるなぁと思っていました。

ある日、いつも同じ服を着て歩き回っているオバさんがいました。

そして、その、いつも同じ服を着たおじいさんに肉だけが入った弁当箱を渡してました。

ここからがビックリしたことなんですが、おじいさんが何も言わずに肉を受け取って、1~2分ぐらいの物凄いハイスピードで肉を全部たいらげてしまったんです。水も飲まないで肉だけです。

私はそれを見て、こんなに肉を食べるのが早い人は初めて見た…と目が真ん丸になりました。

そして、おじいさんはお腹が空いていたんだなと分かりました。よく見ると、痩せているし、いつも同じ薄い服を着て寒そうです。

いつも同じ服を着ているオバさんは、おじいさんが肉を食べるのを見て笑いながら、「あんまり慌てないよ~」と優しく言ったのも印象的でした。

貧乏なオバさんが、貧乏なおじいさんに肉をあげた。

私も何か昼ご飯をあげたいと思ってしまいました。

しかし、私も当時は貧乏で、昼ご飯に100円しか使えなくて、おにぎり1個かパン1個でした。

これをおじいさんにあげたら、私がお腹空いてあまり仕事に集中できない…。

ただでさえ、いつもお腹空いているのに。

だけど、私より明らかに貧乏なオバさんがおじいさんに肉をあげてた。

どうして私は何もあげれないのかと、いつも昼食時におじいさんにあげるかどうかを迷いながら、悶々と食べてました。

あげて断られるのも怖かったのです。

あとは、1度あげたら、何度もあげなくちゃいけないような気がして、自分にはその金銭的な余裕がなかった。

けっきょく、市役所の仕事を辞めるまで、おじいさんに何もあげれずじまいでした。

おじいさんは今は生きているか分かりません。

もし、生きていたら、大戸屋の定食をおごるのもイイなぁと思いました。

感情カウンセラー
結城紗英
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